Business to Social Project

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CROSS TALK

企業とソーシャルセクターの
人材交流によって
どのように社会を
よりよく変えていくことができるのか。

PwCあらた監査法人
梅木 典子 × 五十嵐 剛志

梅木 典子

梅木 典子

PwCあらた監査法人

五十嵐 剛志

五十嵐 剛志

PwCあらた監査法人

※ 2017年6月時点での肩書きです

ビジネスとソーシャル間の垣根は、どんどんとなくなってきている。
そう実感できる取り組みが、今回ご紹介する
PwCあらた監査法人で活躍する五十嵐氏の
認定NPO法人Teach For Japan※への2年間の出向だ。
どのような目的で、そしてどのような成果をもたらしたのか。
また出向後のソーシャルセクター経験を備えた人材が
企業にもたらす価値はどれほどのものだったのか。
直属の上司である梅木氏との対談から出向した日々を振り返る。 ※認定NPO法人Teach For Japanは、さまざまな経験と教育への問題意識、
情熱や成長意欲を兼ね備えた方を独自に選抜し、赴任までに研修を行った上で、
学校の教師として2年間派遣するプログラムを運営しています。

自分のスキルをさらに
活かせる場所を求めて
ソーシャルセクターに参加しました。

出向に至るまでの経緯を教えてください。

五十嵐

様々な仕事を経験しキャリアを重ねていく中で、もっと自分の専門性や知識、スキルといったものを活かせる場所があるのではないかと常日頃から考えている時期がありました。そこでNPOに限らず、様々な講演会や勉強会の場に参加し、自分のスキルを発揮できる場を模索していたのです。そんな中で出会ったのが今回出向するに至った認定NPO法人Teach For Japan。代表の講演会を聴き、「すべての子どもたちが素晴らしい教育を受けることのできる社会の実現」というビジョンに心を打たれたのです。この志に対して何か自分にできることはないだろうかと、いてもたってもいられなくなり、その場で代表の松田さんに声をかけました。

なんとその場で声をかけられたのですか。

五十嵐

今となっては冗談ですが、トイレ掃除でも何でもしますので、何かできることがあれば教えてください、って声をかけましたからね。(笑) すると代表のほうから、「何か、五十嵐さん、得意なことや好きなことはありますか」っていうふうに、逆に質問をしていただきました。そこで自分は監査法人に勤める会計士なので、会計が得意ですということを話したら、「ちょうど会計で困っているのです」という返答をいただき、そこからプロボノ(本業を活かした社会貢献活動)という形でまずは参加することになりました。

「自らのスキルをさらに発揮できるフィールド」を模索していた五十嵐さんにとって、ソーシャルセクターというフィールドはどのように感じましたか。

五十嵐

ソーシャルセクターというフィールドは、ビジネスセクターと違ってお金を稼ぐことを目的にやっているわけではないので、お金はそんなに重要ではないという考え方もできるかもしれません。ただ、NPOの財源をたどってみると、寄附や助成金といった、いわば「善意のお金」で運営されているところが大きい。「善意のお金」であるが故に、どんな風に活用したかに対しての説明責任は企業よりもあるのではないかと私は考えていました。自分が関わることでNPOの社会的責任をきちんと果たすための貢献ができるのではないか、と思いました。またNPOをはじめとしたソーシャルセクターは、まだまだベンチャーフェーズの団体が多いので、人が足りていなかったり、そして資金も潤沢ではなく、組織基盤が整っていないといったことがあります。Teach For Japanも例に漏れず10人前後の規模で運営されている組織でした。自分が忙しいからといって仕事を手伝ってくれる人なんてもちろんいません。本当に1人で組織全体の経営を見なければならない。不安もありましたが、ビジネスセクター、その中でも特に大企業で働いていると組織全体を見て意志決定をするような経験を得られる機会はそう多くはありません。いろんな逆境を打破するクリエイティブな考え方が身につく場所だと思いましたね。プロボノで参加して2、3ヶ月が経った2013年夏、フルタイムでコミットしたいという思いが強くなり出向したいと上司やマネージャーに相談しました。

人材育成の場として、
これほどまでにマッチする
フィールドはないかもしれない。

五十嵐さんから出向したいとお話を伺ったときはどうでしたか。

梅木

非常にいい取り組みなので、是非やったらいいと思いましたね。それには大きく分けて2つの理由があります。一つは、人材育成の観点から。リーダーシップ力をどういうふうに育成していくのかというのは、どこの企業にとっても共通の課題であると思います。しかし研修などのトレーニングによってその力が十分に身につくのかと言ったらそうでもなく、反対に組織のヒエラルキーに慣れてしまい与えられたタスクを着実にこなせるだけの人が増えてしまうというケースさえあります。自分で考えて、その考えや想いを周りの人に共有して、共感を得ることでやりたいゴールに一緒に向かっていこうとするメンバーを集め、チームワークを醸成して、それで組織を動かしていく。私たちが必要としているリーダーシップ力とはそういった力です。ですから、ソーシャルセクターという、ビジョンを大切にしながら社会を変えていこうとする、そして先輩も誰も助けてくれない、全部自分の力で切り開いていかなければいけない環境で働くことは、非常にいい経験になると思いましたね。もう一つの理由がソーシャルセクターの行動指針と、私たちの理念に共通するものがあったからです。世界的なプロフェッショナルサービスネットワークであるPwCでは、ネットワーク全体で、“Build trust in society and solve important problems”といった「社会における信頼を築き、重要な課題を解決する」という理念を掲げています。私たちがクライアントに提供するのと同じ専門性をソーシャルセクターに提供し、ソーシャルセクターの課題解決をお手伝いするというのは、PwCの理念にまさに一致するもので、すごく共感を覚えました。人材育成とPwCのこれからの成長。非常にいい取り組みになると最初から感じていました。

どのようなことを五十嵐さんに期待していましたか。

梅木

私たち監査法人の仕事は、企業に信用供与する監査報告書を出すことで、資本市場を支えています。そのスキルをそのままソーシャルセクターで活用してほしいと思っていました。支援者から受け取った寄附金や助成金をNPOでどういう風に使われているのかを透明性を持って開示することで、信用を得られるようになり、寄附をする側は安心して寄附を続けられるようになります。また活動に共感し、新たな寄附をしようと考える人を増やすことにもつながります。これまでに培ってきた専門性を存分に発揮してほしいと思っていました。

肩書き以上の仕事が、
想像以上の自分へと
成長させてくれた。

プロボノの時とは違い、実際に仕事として出向することになった時の心境はどうでしたか。

五十嵐

最高財務責任者(CFO)という肩書きだけではなく、それ以上の責任を持ちながら働いていたので想像した以上に大変でした。例えばお金を工面するだけではなく、安定的に事業を継続させるために経営管理の高度化、および組織基盤の強化を担当していました。自分の活動いかんによっては、スタッフ全員の職が危ぶまれたり、その家族の生活を守れなくなってしまう。その感覚は企業にいるときと全く別のものでした。

実際にどのような取り組みをされたのですか。

五十嵐

目に見える成果物として、一つは年次報告書を作りました。当初は年次報告書の中の財務報告の部分だけをつくるつもりだったのですが、最終的には40ページ近くある全ページを担当しました。その理由としては、会計の透明性を表現するのはもちろんなのですが、会計では報告できない“成果”についてもきちんと報告をしないといけないと考えたからです。企業であれば“利益”で説明できる部分が、ソーシャルセクターというのは利益ベースで説明することはなかなか難しい。ですから、文章や写真で定性的に表現したり、いろんなデータを使って活動の成果を補完したりと、様々な工夫をこめました。そうすることで“ビジョン”と“ミッション”をより引き立たせ、Teach For Japanの存在意義を明確にすることができました。単なる報告書と捉えていた資料が、共感し支援を促すためのツールへと変化したのです。それによって支援者も増やすことができました。もう一つ目に見える成果としてはTeach For Japanが税制優遇を受けることのできる認定 NPO 法人として所轄庁より認定を受けられたこと。そうしたことでこれまでの支援者だけではなく、潜在的であった支援者からも寄附をしていただけました。

このような成果を目の当たりにしてどう感じましたか。

梅木

本当に説得力がある資料で素晴らしいと感じました。会計士は職業柄言いたいことを文字いっぱいにして詰め込んでしまう癖があるのですが、この資料は全くそんなことはなく、自分の想いや伝えたいことをシンプルにわかりやすくメッセージしていました。相当悩んだのだろうと思います。プレゼンテーションのスキルが格段に高まっていると感じました。

五十嵐

今、梅木の言葉を聞いて思ったことなのですが、ソーシャルセクターでは情報をより重要なところに絞って伝える必要があります。冊子にかけられるコストは本当に限られているので、大事なところを凝縮して伝える必要がある。1ページ増えたから追加予算を、という訳には決していかないのです。この冊子もたくさんの方の協力があって、ほぼ印刷費だけで作られています。たくさんの想いを日々受け取る中で、そういったスキルが自然と磨かれていったのではないかと思います。

梅木

そういった経験をする中で培った五十嵐の人脈は目を見張るものがありました。また、実際に知り合った方を紹介してもらい、新たなネットワークを構築することもできました。そういった意味でも非常にいい出向になったのではないでしょうか。

社会と自分は
密接につながっている。
そう自覚できるようになれた。

ソーシャルセクターへの参加を考える方、協働を考えられる企業へ最後にメッセージをお願いします。

五十嵐

社会の現実を知識として備えている人は多いかもしれませんが、現場を深く理解している人はほんとうに限られていると思います。私がTeach For Japanでの活動を通じてすごく重要だと思ったのが、現場を理解し、当事者意識を持つことです。実際に現場に行くことで、人の痛みを自分の痛みとして感じたり、人の置かれた立場を想像して、その人と同じ感情を抱けるようになります。すると社会課題を自分の課題として動けるようになっていくのです。社会課題は簡単に解決できるものではないのですが、少しでもいい方向に動くような出来事があったりすると、自分のことのように嬉しく感じられるようになります。それは社会と自分が密接に関係しているということを自分で理解しているからこその感覚です。そういった視点を自分の中に持てるようになったことは、これからのキャリアにおいてとても役立つと思っています。

梅木

五十嵐が言ったように、企業の中だけにいると絶対に得られないような経験をできるというのが素晴らしいですね。人材育成の観点から見れば、企業にとっては絶好のチャンスだと思います。また事業と関連性のある分野での出向であれば、よりビジネスチャンスも広げることができると思います。なんといっても業界の人脈を広げて帰ってくると言うのは、企業の成長においてとても大きな財産になりますから。また個人にとっても、市場価値を高める有意義なキャリアステップだと感じます。企業、ソーシャルセクター、そして社会。この3つがwin-win-winになる関係を築くことができればさらに大きく活動が広がり、社会課題の解決に向けた前進になると思います。これからの様々な交流に期待したいです。

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